とあるお母さんとの出会い

 6月に石巻の被害の大きかった地域へ視察に行った時、自転車に乗ってそこへ来たお母さんがいたので声をかけました。すると、そのお母さんは「ここが、私の息子夫婦が経営するお店だったのよ」と教えてくれました。よく見ると、そこは家の基礎部分だけが残っていて、元々そこにあったはずのお店が、そっくり流されてしまったようでした。
 「(息子夫婦は) まだ、行方不明なのよね」と言われてました。震災から3ヶ月が経ち、まだ見つからないんだけど、どうしても諦めたくなくて、今でも探しているという話でした。
 この日はお忙しい中だったのですが、時間の合間を縫って、わざわざこの場所に足を運んだようです。話を聞くと「今日は、息子夫婦の結婚記念日だから、何か見つけられたらいいなと思ってここに来たのよ」と言われてました。

 

 一通りお店の敷地内を歩かれた後、私たちに一礼して、自転車に乗って帰って行かれました。
 それから1ヶ月後、お店の敷地内に花が添えられていました。
 2ヶ月後、お店の敷地内に張り紙が張られていました。
 3ヶ月後、お店の敷地内に立て看板が立ててありました。
 半年後の12月、お店の敷地内には、まだ立て看板が立っていました。消えかかった文字の上から、マジックで何回も書き直した跡がありました。その脇に、きれいなお花と食べ物が置かれていました。

 6月にお店の前でお母さんに出会って以来、このお母さんに直接会う機会はありません。ですが、今でもお母さんは、頻繁にこの場所を訪れているのだと分かりました。

 

 

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