知識と行動の差

宮城県内の沿岸地域に住んでいるお母さんから聞いた、震災で学んだお話を紹介します。

〔震災前の生活〕

私の自宅は漁港の隣にあって、自宅を出て30歩で海という立地でした。趣味を聞かれると「家族で釣りをすることです」と、よく答えていました。

沿岸部の漁港 (震災前の自宅隣の場所)

その一方、この街は約60年前、最大5mのチリ地震津波が到達した場所でもあります。そのため、防災訓練は頻繁に実施してましたし、街の沿岸部全体には高さ5mの防潮堤も建設されました。他地域と比べても、防災意識の高い人は多かったと思います。

〔震災当時の動き〕

3月11日、私は職場近くの山の上で震災を経験しました。大きな揺れに驚きました。揺れが収まった直後、私は「津波が来るかもしれない」と直感しました。そこで、(海近くに位置する) 職場に誰か残っているかもと心配になり、職場へ戻りました。すると職員1人が残っていたので、逃げるように伝えました。

次は、自宅に誰か帰っているかもと心配になり、自宅へ車を走らせました。すると大渋滞に巻き込まれて、(普通なら5分で帰れる道中なのに) 20分以上かかりました。自宅へ到着すると、私と同様に自宅を心配して戻った主人がいたので、逃げるように声をかけました。最終的には皆が各自の車に乗り、3人が車3台で並んで逃げました。

道路は依然として大渋滞でしたが、無理やり割り込んで入れてもらい、何とか津波が来る前に高台へ避難できました。

津波が去った後日に自宅へ戻ってみると、跡形もありませんでした。結果的にこの街を襲った津波は約15mでした。沿岸部にあった5mの堤防は、全く意味を成しませんでした。

〔震災後の気付き〕

それから月日が流れるに従い、街の復興工事は少しづつ進み、現在は落ち着きを取り戻しています。

現在の街の様子 (15mの津波に襲われた地域)

そんなある日、震災当日の私自身の行動を振り返ってみました。すると、その行動は間違いだらけだったと気付いたんです。

間違い1:揺れた時は高台にいたのに、揺れが収まったら高台の下にある職場へ戻ったこと。                間違い2:職場よりも更に海近にある自宅へ戻ったこと。   間違い3:大渋滞の中を3人が各自の車に乗って避難したこと。

今回は運良く逃げ切れましたが、津波の到達時間がもう少し早ければ、私を含めた3人はこの世にいなかったです。

先程も言いましたが、この街は以前から防災教育に力を入れていたため、私自身も町の防災訓練に毎年参加してました。地震発生時にとるべき行動は、他の人に教えられるくらい頭に入っていました。しかし、自分自身がいざ、大地震に襲われてみると、その知識を全く生かせませんでした。むしろ、防災訓練から得た知識とは真逆の行動をとっていたんです。私は毎年防災訓練に参加し、それなりに知識もあったので「自分は大丈夫だ」と、心のどこかで思っていたんです。

〔震災から学んだこと〕

私には、震災から学んだ教訓があるんです。         それは「知ってることと動けることは違う」です。正しい知識があっても、正しい行動をおこせるとは限らないと痛感しました。自然災害に対しては、例えどんなに豊富な知識を持っていても、「私は大丈夫だ」という 傲慢な姿勢 にならず、謙虚な姿勢 で対することが大切だと思いました。