宮城県石巻市の沿岸地域に【がんばろう!石巻】と書かれた看板が立っています。2016年にこの場所を訪れた際、看板を設置した人から聞いた話です。
3月11日、この地域は6.9mの津波に襲われました。私も自宅兼店舗を失い、避難所に身を寄せました。
数日後、落ち込んでいる友人と話しながら、ふと『がんばっぺ』と言っちゃったんですが、まるで自分自身もそう言われたような気がしたんですよ。“私も頑張らなきゃな”って思いになました。
10日後、店があった場所で何かないか探していると、がれきの下から工具箱が見つかりました。箱は泥だらけでしたが、中からはドリルなどの工具が出てくるのを見て、まるで宝物を発見したような気持ちになりました。少し希望が湧きました。家も無くなり、職場も無くなり、できること自体が限られている環境だったので “できることは全部やろう” と思いました。そこから、私なりにいろんなことに取り組んだのですが、その中の一つが看板作りでした。
1ヶ月後、店があった場所に【がんばろ!石巻】の看板を設置しました。製作から完成までは5日かかりました。友人にも協力してもらい、店の周辺に流れ着いた大きめの板を店の跡地の基礎部分に取り付けて、ペンキで文字を書きました。当時は、看板周辺が一面がれきだらけで、自衛隊も遺体捜索をしている状況だったため、看板を見て疑問の声を投げかける人もいました。しかし、看板を見て手を合わせる人、『励まされた』や『勇気付けられた』と言う人もいて、やって良かったと思いました。
その後、5月になると鯉のぼり、8月には七夕飾り、12月にはクリスマスツリーなど、季節に合わせていろいろな物を設置しました。毎年の3月11日や、震災から1000日ごとの節目に合わせて追悼の場を持ちました。
5年後、看板の場所が町の再開発工事に影響することから、設置場所を若干海側に移転させることになりました。ちょうど看板自体も老朽化していたため、サイズやデザインは全く同じで新しい看板を作り、設置しました。
この2代目の看板は、近くの中学校の生徒さんも一緒に製作しました。今後は、ペンキの塗り直しや定期的な補修作業も一緒にやりたいと考えてます。月日が流れることで震災の風化が懸念される中、この活動が 震災を未来の世代へ伝えていく仕組み の一つになればと思っています。