写真が宝物に変わる日

東日本大震災で被災した女性が教えてくれた教訓です。

発災当時、この町は10m以上の津波に襲われて、私の自宅を含めた沿岸部の住宅街は丸ごと流されてしまい、一面がガレキの町と化しました。町全体が、あまりにも変わり果てた光景になったので、最初は私も途方に暮れました。             でも、時間の経過とともにガレキが片付き、お店が再開し、災害公営住宅ができ、町を歩くと住民の笑い声が聞こえるようになりました。「やっと、落ち着いた生活ができそうだな~」と思えるようになってきた頃の出来事です。

 

ある日、自宅にいた私は「家の中が殺風景だから、写真でも飾りたいな~」と思いました。しかし、震災前の家は流されてしまったため、写真やアルバムなどを含む過去の記録が、一切残っていませんでした。唯一、スマートフォンには震災前の写真データが残っていたので、家に飾れそうなものを探しました。

しかし、いざ探してみると、飾れそうな写真が全然見つかりません。データ自体はしっかり残っていたのですが、風景写真や料理の写真、加工した自撮り写真など、SNSを意識して “インスタ映え” や “かわいさ” を狙った写真ばかり。しかも、そのほとんどは最近の写真。データ容量を食う関係で、半年以上前の写真は削除済み。結局、プリントアウトして家に飾りたいと思えるような写真は一枚も見つかりませんでした。

あの時は相当悔しかったし、ショックでした。私は元々、写真を撮るのがすごく好きで、家族の中でも撮影担当でした。友人たちと比べても、撮っている写真の枚数は多かった方だと思います。でも、一番肝心な “家族” “思い出” の写真を全然撮っていなかったことに気付いたんです。

 

最近、私は周囲の人によく「写真はいっぱい撮ってくださいね」と話しています。でも、それに加えて「普段の何気ない家族の日常が分かる写真も忘れずに!」と話します。例えば、外へ出かけた時に撮ったり、家族の誕生日に撮ったり、子供の行事で撮ったり、年末年始で親戚が集った時に撮ったり…ちょっとした時に写真を撮り、それを大切にして欲しいです。

それらの写真は、今すぐには価値を感じないかもしれません。 でも、数年後か数十年後に「気付いたら宝物に変わってた!」 と思える日が、絶対に来ると思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です